
(宗教工芸新聞2015年9月15日号より引用)
アート素材だからできるススキのアレンジ
私の主宰するスクールでは、毎年秋に生徒作品展を開催しています。
9月までに材料を用意してデザインを決め、10月に作品制作。
スクール最大のイベント実施は11月です。
この問、生徒さんたちのテンションは上がりっぱなし。
スペイン風アイアンの窓枠、アンティーク風のドア、陶器やガラスのポットなど大型のベース類が並ぶ教室の活気も半端ではなく、さながら美術部の部室のよう。
最近、お花の方はプリザーブドフラワーとアートフラワーに人気が集中しているきらいがありますが、以前はナチュラルなドライフラワーの風合いを好む生徒さんもいらっしゃいました。
私も、周辺をヴィクトリアンな雰囲気に染めてしまうカリカリのバラのリースは大好き。
でも、自然乾燥の素材は取り扱いが難しく、作品展会場への運搬や搬入時にぽろぽろと散ってしまう裏方泣かせの面もあります。
何年か前、ホテル経営で忙しい生徒さんのレッスンが滞っていたので、作品展が近づいたころ電話をしてみました。
「時聞がないので家で出来るところまでやってみます」というので待っていると、ギリギリになって持ち込まれたのはなんと、ススキだけのアレンジ。
高原のホテル周辺で採ったというススキを束ねてカーブさせ、先端に向かうほど細くなるエレガントなアレンジは素敵だったのですが、作品展会場の百貨底のライトに照らされ、いつの間にか穂がぽわぽわに開いてしまい、それもまた風情がありましたが、ちょっと大変なことになってしまいました。
作品展シーズンになると思い出すエピソードです。
秋の高原をドライブすると、道の両側からススキがあふれるように迫ってきます。
あの風情をご先祖さまにお届けしたいけれど、お仏壇回りを枯葉で汚したくはありません。
アートのススキにアルストロメリアをミックスしたら、個性的な秋のお仏壇になりました。
アート素材はご先祖様にも優しく、そしてお仏壇をお守りする人の味方でもあるのです。
(坂本裕美 アートフラワー作家 カラコレス代表)