
(宗教工芸新聞2015年7月15日号より引用)
祖母のユリを思いながら
夏を代表する色といえば、オレンジでしょうか。
私も大好きな色なのですが、オレンジ色の服は1枚も持っていません。
カラーセラピストに色の診断をしてもらったところ、一番似合わない色がオレンジと判明したことから、着るのをあきらめてしまったのです。
でも真夏の強い日差しの中、オレンジ色を素敵に着こなしている人を見ると羨ましくなります。
せめてお仏壇には、季節感たっぷりのオレンジのユリをお供えすることにしました。
ユリのお伴は、アイスランドモスの苔玉。
ふわふわのアイスランドモスは、本物をプリザーブド加工したもの。
ジオラマの樹木にも使われる苔で、トナカイのエサとしても知られています。
これをスタイロフォームのボールに貼り付け、かわいらしい苔玉を作ってみました。
園芸の世界でも苔玉は人気で、涼しげなグリーンはオレンジとの相性もぴったりです。
子どもの頃、祖母の家に向かうローカル電車の窓から、山の斜面がヤマユリのオレンジで燃えるように見えたのを鮮やかに覚えています。
祖母の家に着くと、庭にもやはりたくさんのオレンジ色のユリ。
祖母が手をかけていた頃の庭は、木々の間に池があり、小花は控えめにした和風の庭でした。
夏休み、祖母のそばにしゃがみ込んで庭を描くと、すぐにオレンジ色のクレヨンだけが小さくなってしまったのも、今となっては夏の思い出です。
その庭は、母が世話をするようになってナチュラルな山野草ガーデンにイメージを変え、当時の面影はありません。
ユリを飾ったお仏壇の前でそんな近況を伝えれば、好奇心旺盛な祖母の事、「それもまた楽しそうじゃない」と言いそうです。
(坂本裕美 アートフラワー作家 カラコレス代表)