(宗教工芸新聞2015年6月15日号より引用)
高原のグリーンと白の清楚なアレンジ
淡い芽吹きが始まったかと思うと新緑になり、いつの間にかずっしり濃緑の野山へ。
初夏から夏にかけての色は、圧倒的な緑のグラデーションです。
山に囲まれた長野市にいるせいで、グリーンへの感度が高まっているように感じています。
そしてこのグリーンに似合う色といえば純白。
たとえば真っ白なミズバショウ。
実は花ではなくて葉の変形だそうですが、グリーンを照らす灯のようです。
風に揺れる純白のコブシの花は深山に誘う手招きのようで、グリーンとホワイトは、限りない高原の物語を紡いでくれます。
過日、信州の高原を代表する軽井沢に行きました。
クラシック音楽ファンの方ならご存知のコンサートホール「軽井沢大賀ホール」が開館10周年を迎え、記念事業としてアートフラワーでの装飾をされることになり、そのお手伝いをさせていただいたからです。
玄関ドア脇と館内を飾る4つのリースは色彩を抑え、アイビー、ホップ、ドウダンツツジのたっぷりのグリーンに真っ白なバラをあしらい、夏の高原のさわやかさあふれるデザインにしました。
仏さまにもグリーンと純白の季節感をお届けしたくて作ったのが今回のアレンジです。
使ったのはグラジオラスとデイジー。
小さなお仏壇にグラジオラスは大きすぎるので、先端のつぼみと小さめの花をカットしてデイジーの中心に置いてみました。
デイジーとグラジオラスでは旬が違いますから、実は小菊を使いたかったのですが、小菊の枝はそよそよとはいきません。
高原の風に華奢なデイジーがそよぐ姿が可憐かと。
アートフラワーならではのとりあわせの純白でふわふわの花びらにアクセントのグリーン。
清らかなアレンジは、お盆のお花としてもぴったりだと思います。
(坂本裕美 アートフラワー作家 カラコレス代表)