(宗教工芸新聞2015年5月15日号より引用)
小さなお仏壇とイングリッシュローズ
小さなお仏壇が必要になりました。
目的は仕事用です。
小型のアートのお供え花の撮影や、見本市に持参して使うため。
こんな目的のために買ってもいいのか不安で、取り引き先のお仏壇店でまっ先にその点を尋ねました。
すると「魂が入っていないから大丈夫ですよ」との答え。
念のため「扉を閉じてゴトゴト運んでもバチが当たりませんか」とうかがうと「心配性ね」と笑われてしまいました。
ご先祖さまの入っているお仏壇を移動するには、和尚さんを呼んで魂抜きをしなければならないけれど、そもそも魂が入っていないのだから大丈夫であることをきちんと説明してくださったので、ひと安心です。
そして選んだのが、明るい茶系でライトも付いた一番小さなサイズのもの。
お仏壇ならではの重厚さのないのが、かえって仕事用にふさわしい感じで気に入りました。
次はお仏具ですが、一般的なサイズを見慣れている私が選ぶと、どれも大き過ぎ。
結局、専門家のアドバイスでLEDのお線香のついた香炉と、ベルの形がかわいらしい金色のおリンに。
ご本尊の代わりはクリスタルのハスの花。
驚いていると「こういう人形を飾る方もいらっしゃいますよ」と、一休さんが火鉢でお餅を焼いている瀬戸物の人形を見せてくださいました。
なんてかわいらしい。
禁止事項が多いだろうと思いながらうかがったお仏壇店でしたが、心得ておくべきこと以外は柔軟で良いとのこと。
大事なのは気持なのねと。
プロの方がアドバイスしてくださる対面販売の楽しみを久しく味わっていなかったことに気付いた、充実のショッピングタイムでした。
撮影用お仏壇のデビューは、フェンスに絡まったイングリッシュローズを摘んできたかのようなお供え花と一緒に。
仲良くひしめきあう花びらの様子をじっくり見ていると、さわやかさが伝わってきて、ご先組様に夏の足音を届けることができそうです。
(坂本裕美 アートフラワー作家 カラコレス代表)