(宗教工芸新聞2015年4月15日号より引用)
デフォルメしたムスカリと水色のバラ
今年は桜の時期に本格的な雪が降り、わが家の庭のムスカリも白い帽子をかぶっていました。
寒さにシュンとなるどころか動じる気配もなく咲き誇る様子に、改めて春の花々の強さを感じました。
このムスカリは、息子が幼稚園から持ち帰ったもの。
水栽培でシーズンを楽しんだ後、球根を土に下ろしました。
とたんに増え方に勢いがつき、庭の西側の、お隣との塀の境に一列に群生するようになりました。
そして息子も高校生です。
ギリシャ語で麝香(じゃこう)を意味するムスクが花名の由来とのことですが、種類によるようで、わが家のムスカリに香りはありません。
ちょうど隣に沈丁花があり、こちらの香りが強烈なので遠慮しているのかなと思ったり、春の庭は想像力をかきたててくれます。
さて、このムスカリ。
このまま模造したら、小さ過ぎてあまりに儚げです。
アートフラワーには、限りなく本物らしさを追求したものがある一方、デフォルメして本物にはない味を出したものもあり、ムスカリは後者です。
群生してこそ存在感を示すムスカリが、アートなら一輪で立派に主役を務めてくれますので、水色のバラと合わせてキャンドルスタンドに置いてみました。
水色のバラもアートフラワーならではの色ですものね。
アクセントは淡いグリーンの木の実です。
先に行われた全国仏壇仏具振興会主催の春の展示会では、たくさんのお客さまにカラコスの「アートのお供えの花」をご覧いただきました。
いただいた感想の多くは「写真で見るより一層本物みたい」「生花と区別がつかないですね」というもの。
お供えの花に使用しているカラーやカサブランカは本物らしさを追求したアートフラワー。
私の父がうっかり水をやってしまったという事件がありました。
本物らしさも偽物らしさも、アートフラワーの得意技です。
(坂本裕美 アートフラワー作家 カラコレス代表)