
(宗教工芸新聞2015年2月15日号より引用)
春を届ける日本たんぽぽ
こっそり道端に挿しておいたら、下校途中の小学生がまちがって摘んでしまいそう。
そんな精巧なアートのたんぽぽを見つけました。
ご先祖さまに春を届ける最初のアレンジはこれで決まり。
しかも、よく見るとこれ、日本たんぽぽではありませんか。
外来種の西洋たんぽぽの勢いに負けて、在来種の日本たんぽぽは、信州の野山に行って見つけるのがたいへんになっています。
在来種にもがんばって欲しくて、たんぽぽを見つけるとどちらなのかチェックするくせがついてしまいました。
東京で学生生活を送る娘を訪ねた時、街路樹の茂みにひっそり咲くたんぽぽを見つけ、いつものクセで花を裏返してみると、なんと在来種だったことがあります。
ガクが反り返っていると外来種、そうでなければ在来種。
車の排気ガスを浴びる場所で健気に咲いている様子に、娘と顔を見合わせて感動しました。
発見の確率は、四つ葉のクローバーよりも低いくらいに感じていましたから大感激です。
ますます技巧を凝らすアートフラワーの世界。
道端の草花や、野山にありそうな葉もの、枝ものの種類も増えて、アレンジの楽しみは増すばかりです。
このたんぽぽも「ライオンのタテガミ」を意味する英名そのまま、繊細な舌状花が、春の光に向かって手を伸ばすかのように咲き誇っています。
花がしぼんで綿毛になる前のぽわぽわした起毛の加減も、葉の切込みも本物そっくり。
そして、花びらと一緒に上を向くガクまでがリアルな日本たんぽぽ。
そんな、春の香りいっぱいのたんぽぽを、宝箱の様なボックスにアレンジしてみました。
濃い紫色のベリーとドイツ製のグリーンのリボンを合わせたら、ありふれた野花にも特別感が出て、毎日のお参りにも自然と心がこもります。
ご先祖さまも、道草をした子ども時代を思い出して笑顔になってくれそうです。
(坂本裕美 アートフラワー作家 カラコレス代表)