(宗教工芸新聞2014年11月15日号より引用)
アートのお花を入り口にご先祖さまと対話
あまりのかわいらしさに、ピオニーの造花を衝動買いしました。
季節の花ではありませんが、生花と同様、それ以上にオールシーズン好きな花を選べるのが造花の良いところ。
さて何を組み合わせたらいいかしらと庭や畑を見回すと、あちらもこちらも菊の最盛期。
そこから少しいただくイメージで白い菊を入れたら、清楚な和風のアレンジになりました。
深まりゆく秋の気配をご先祖さまにもお伝えできそうです。
このピオニーですが、花芯の部分まで実に丁寧に作りこまれています。
花の細部をデフォルメされた造花たちは私にとって、自然観察の入り口として色々な興味を湧き起こさせてくれます。
そもそもお花のアレンジというと主人公の花に注目が集まりますが、私の教室ではドライにした実も多用します。
“実”とはいっても実際のところは、実が落ちた後のサヤやカラの方が多くなります。
実自体は一刻も早く土にもぐったり、烏の力をかりて移動したり、羽をつけて飛んだりと種の保存の使命に邁進しますから、使わせていただくのはサヤやカラ。
遠目には花と見間違えるようだったり、ハートや星型だったり、トリュフのようだったりとユニークな形で、組み合わせによってはメインのお花を何倍にも引き立ててくれます。
街を歩いていて、街路樹にたとえば椿の実がなっているのを見たりすると楽しくなってしまうのです。
椿の実も落ちた後にはサヤが残るのですが、彫刻刀で荒く削ったようなワイルドな質感は、肉厚な花びらとアレンジしたら面白そう。
今回の主役、アートのピオニーに結実を期待することはできませんが、花の中まで繊細に作り込んでいる技が見事で見とれてしまいました。
ここから種が生まれるのだと思うだけで、エネルギーを感じます。
そういえば2千年も前のハスの実が芽を出したという話もありました。
自然界の輪廻転生に想いを馳せるきっかけが、お仏壇に飾られたアートの花というのもその精巧さゆえですね。
(坂本裕美 アートフラワー作家 カラコレス代表)