
(宗教工芸新聞2014年10月15日号より引用)
オレンジ尽くしのお仏壇
しんと静まりかえった和風の庭に、落ち葉が一枚ハラハラ舞い降りる。
秋のシーンの定番ですが、人がそんな風流をゆったり愛でる時に、私はテレビ画面を凝視してしまいます。
観察するのは葉の「散り方」です。
精巧なアートのもみじですが、自然のもみじのようにくるくる回ったりスイングするのは苦手。
試しに散らしてみると、ぼったりと落ちてしまうのです。
重さのせいかしらと思って庭のカエデの葉を1枚計ってみると1g。
一方のアートのもみじは・・・やっぱり1g。
我が家のスケールが1g単位なので、小数点以下に違いがあるのかもしれませんし、それより葉の切り込みの微妙な違いで生じる風の抵抗のせいなのかもしれませんが、ついつい気になって落ち着かない私の秋です。
最低気温が8度くらいになると紅葉が始まるそうです。
美しい色のためには陽の光と大きな寒暖差が必要ときくと、信州の肱しいまでの紅葉の色合いには理由があるのだと分かります。
ご先祖さまも、秋空をバックにした紅葉に心を奪われていたはずだと思い、お仏壇にその感動を届けたくなりました。
赤の濃淡に黄色の紅葉を、野山の風景を描きながらアレンジしていると、サンキライの赤い実も入れたくなりました。
もうひとつのポットにはほおずき。
鬼灯という漢字を当てているだけあって、まるでお仏壇を照らす灯寵のようです。
オレンジ尽くしに仏さまもびっくりされるでしょうか。
いいえ、そんなことはないと思います。
仏教誕生の地のお坊さんの袈裟は確かオレンジ色だったはず。
そういえば10月は、ハロウィンのオレンジ色も目立ちますし、洋の東西を問わず、オレンジ色は仏さまを慰める色のように感じています。
(坂本裕美 アートフラワー作家 カラコレス代表)