(宗教工芸新聞2014年3月15日号より引用)
母の日のお花(1)
函館でファッションと化粧品の店を切り盛りしていた夫の母が亡くなってから、最初の母の日がやってきます。
お酒落で華やかで仕事に家にと元気に動き回り、いつも周囲の憧れだった義母は、花に例えたらバラ。
生前の母の日、私はカーネーションよりも似合いそうな大輪のプリザーブドのバラをメインにしたアレンジを贈っていました。
義母は「お客さまに羨ましがられたわよ」のメッセージと一緒に、自分の店に飾ったそのアレンジの写真を送ってくれました。
今年の母の日のプレゼントはお仏壇に供えます。
長野から遠く離れた函館でお仏壇を守っているのは高齢の義父ひとりですから、水を取り換える手間のいらない造花にするつもりです。
「造花」というと一昔前のイメージをお持ちの方は見劣りしそうに感じられるかもしれませんが、そんなことはありません。
最近の造花のグレードの高さは、目を見張るばかりなのです。
バラひとつとってもオールドローズ、イングリッシュローズ、蔓バラ、ミニチュアサイズ…と、数えきれない種類と、本物と見間違うばかりの品質。
たとえば満開をすぎた花びらの先端が、ほんの少し茶色味を帯びているところまで細かく表現され、いま庭から摘んできたばかりのようです。
お仏壇にとげのある花は良くないと言われてはいますが、生前の義母の嬉しそうな顔を思い出すと、やっぱりバラを供えたい。
義母は、そんな私の気持を理解してくれるような気がしてなりません。
やはりとげは避けたいし、オーソドックスなカーネーションでというのなら、色とりどりの花束にしてお供えするのはいかがでしょうか。
(坂本裕美 アートフラワー作家 カラコレス代表)