
(宗教工芸新聞2014年2月15日号より引用)
もう二十年ほども前、デンマーク人アーチストによるアートフラワーの作品を雑誌で偶然目にした私は、一日で魅了されてしまい、彼を訪ねて首都コペンハーゲンに行きました。
アトリエ兼用の小さなショップを開いていた彼に会って以来、花材の買付けのためのデンマーク通いを続け、昨年も秋と冬の2回行きました。
機能的ではないけれどエレガントな古いホテルに泊まり、中世から続いているという石畳の広場を散歩するのが好きです。
そこには小さな花のマーケットがあり、冬の北欧特有のくすんだ空気にカラフルな明かりを灯しています。
多品種のバラやクリスマスローズやアマリリス。ぎっしり寄せ植えされて春を待つヒヤシンスの球根たち。気の早いチューリップも。
クリスマスの季節にはモミの木やドアに飾るリースや丸い実が可愛らしいヤドリギ、時にはトナカイの置物なども登場します。
厚いコートに身を包んだコペンハーゲンの人たちが次々と立ち止まってはのぞき込むのを見ると、花が暮らしの一部に溶け込んでいるのを感じます。
税金が高いこともあって、デンマークではちょっとした軽食をとっても2〜3千円かかる中、オランダからの輸入が多いという生花は比較的手ごろです。
北欧の冬は長く、部屋で過ごす時聞が長くなりますから花が欠かせないのでしょうか。
そんな室内の様子を想像すると、私が制作する「アートのお供え花」の考え方と同じことに気付きました。
大切にしたい時間だからこそ、きれいで丁寧なお花を…。そんな思いが伝わることを願っています。
この連載では、「アートのお供え花」をテーマに、仏事や季節毎のお供え花、クリスマスやバレンタイン、ハロウィーンのお供え花などの提案をして行きたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
(坂本裕美 アートフラワー作家 カラコレス代表)